コーヒースタンドおしゃれすぎて入れない問題
私が住む地方都市にも、続々と店舗数が増えているコーヒースタンドなるもの、苦手である。
広いとは言えない店内には店主が自らバイイングしたであろうセンスのいい家具が絶妙な配色のもと完璧な空間を作っている。
スタンドと言えど店によっては2.3席ぐらいの座り席があり、そこに座るはこれまたセンスのいい客。この人絶対ハナレグミとか聴いてるよね。
無口っぽい店主は決まってお洒落髭を蓄えており、人によってはレオナール藤田を彷彿とさせる丸メガネをかけている。本人も狙ったのか、素晴らしき乳白色のニットを着ていたりする。
いや正直気にはなってる。
数百円のコーヒーでもこんな素敵な空間で淹れてもらえたらきっと豊かな時間を送れるだろうし、何よりこの店に行ったことあるよ常連だよっていう付加価値、いいじゃん?
気にはなってんだよ。けど一人で入るのは無理。一人で寿司もラーメンも行けるけど、お洒落なコーヒースタンドは無理。
一杯淹れてもらっている間に私はこのお洒落無口店主にどんな会話を振ればいいのか、例えば2度目の来店の際はいつもどうも的な顔して伺えばいいのか、仮に店主と会話したとしてハナレグミ聴いてるお洒落客がいきなり会話に混ざってきて今度みんなでキャンプでもしようよとかいう流れになったらどうしようとか、そのキャンプって絶対にアヒージョ作る人いるでしょとか、自意識過剰で本当にくだらない事を無駄に考えてしまうのだ。私、お洒落するのは好きだけど、お洒落な大人こわい。これ以上お洒落コミュニティーを広げたくないのである。
という取るに足らない気持ち悪い感情が邪魔をして、結局気になるコーヒースタンドの前をたった数歩で通り過ぎてしまう。
通り過ぎている間に考える。コーヒーって、ほっと一息つきたい時に飲むよね。リラックスするために飲むよね。CMでも、いつでもほっとAGF!言うてるし、コーヒー買う&飲む間に無駄な感情を抱いてストレス溜めたら本末転倒やんね。
無駄な妄想を繰り広げた後にすぐ自己正当できるのは、第二の思春期がなせる技。第一思春期には、できなかった。
結局私は数件先のコンビニまたはタリーズで、バイトの女子大生がマニュアル通りに淹れてくれたコーヒーを買う。こじれたアラサーの心に沁み入る。ホット頼んだんだけど、アイスで作ってくれたんだね。美味しいよありがとう、バイト頑張って。
誰でもウェルカムなお店も素敵だが、そのお店の雰囲気に自分が合わせるような、足を踏み入れるとカッチリとした空気を感じるようなそんなお店に自然と立ち入れる大人になるには、まだ少しかかりそうだ。